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大手かベンチャーか

「新卒でベンチャーはやめとけ」は本当か、6つの理由を公的データで確かめる

公開 この記事は約13分で読めます

「新卒でベンチャーはやめとけ」とは、研修がない・休めない・給料が低い・つぶれる等の理由で、1社目にベンチャーを選ぶことを止める意見です。公的データで確かめると、規模で差が出る理由と、企業ごとの差が大きい理由に分かれます。6つの理由の検証と、志望企業での確かめ方を整理します。

先に結論

  • 「やめとけ」と言われる理由は、主に研修・休めない・給料・倒産・離職・転職の6つ
  • 公的データで規模による差がはっきり出るのは研修。正社員にOFF-JT(職場を離れた研修)を行った事業所は、30~49人の企業で53.0%、1,000人以上で85.4%
  • 有給休暇の取得日数の差は、30~99人と1,000人以上で年1.5日程度。休みやすさは規模より企業ごとの差が大きい
  • 大卒で1社目を辞めた人のうち、理由に倒産・整理解雇・希望退職を挙げた人は0.8%。「つぶれて職を失う」形の離職は少ない
  • 若者雇用促進法では、応募者などから求めがあった場合、企業は採用・離職の状況/研修などの取組/残業時間などの3つの類型それぞれについて、少なくとも1項目の情報を提供する。「やめとけ」の中身は、志望企業ごとに確かめられる

この記事で分かること

  • 「新卒でベンチャーはやめとけ」と言われる6つの理由
  • 6つの理由それぞれが、公的データでどこまで当てはまるか
  • 規模で差が出る理由と、企業ごとの差が大きい理由の見分け方
  • 大手とベンチャーで、情報の確かめ方がどう違うか
  • 志望企業に情報を求めるときの項目と聞き方
  • 状況別(親に止められた/大手の内定もある/ネットで不安になった)の考え方

「やめとけ」と言われて迷っている段階から、自分に当てはまる理由かどうかを一緒に整理できます

「やめとけ」と言われる6つの理由と、検証の結果

「やめとけ」は、1つの理由ではなく、いくつかの心配をまとめた言葉です。なお、この記事で使う公的データは企業や事業所の規模別の数値です。ベンチャーと小規模の企業は同じではなく、社員が数千人のメガベンチャーもあれば、ベンチャーではない小規模の企業もあります。まず理由を6つに分け、公的データで見たときの結果を先に示します。

#よく言われる理由公的データで見ると判定
1研修・教育の仕組みがない規模が小さいほど、研修を行う事業所の割合は低い規模の差が大きい
2休めない・激務有給の取得日数の規模差は年1.5日程度。1社目を辞めた理由の1位は、規模を問わず労働時間・休暇企業ごとの差が大きい
3給料が低い20代前半の平均の差は約1割。30代以降に差が広がる平均の差はあるが、企業ごとの差が大きい
4すぐにつぶれる1社目を辞めた大卒のうち、倒産・整理解雇等を理由に挙げた人は0.8%離職の理由としては少ない
5すぐに辞める人が多い規模が小さい事業所ほど3年以内離職率は高い規模の差はある。辞めた理由の確認が必要
6転職で不利になる規模で決まる公的な数値はない。1社目で何を身につけたかで変わる規模では決まらない

判定が「規模の差が大きい」のは、6つのうち研修だけです。それ以外は、規模の平均より、個別の企業の差のほうが判断に効く理由です。以下、1つずつ見ていきます。

研修と休めなさは、データでどう見えるか

理由1:研修・教育の仕組みがない

正社員に研修を行った事業所の割合を、企業規模別に見ます。

企業規模OFF-JT(職場を離れた研修)を実施計画的なOJT(職場で計画を立てて教える)を実施
30~49人53.0%44.4%
50~99人65.5%51.3%
100~299人79.6%70.4%
300~999人85.2%69.8%
1,000人以上85.4%78.4%

出典:厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」調査結果の概要(新しいタブで開きます)(2026年7月31日公表)。常用労働者30人以上の企業の事業所が対象で、2024年度に正社員へ実施した割合。

研修は、6つの理由の中で規模の差がいちばんはっきり出る項目です。30~49人の企業では、OFF-JTを行った事業所は約半分でした。

注意点が2つあります。

  • 30人未満の企業は調査の対象外。社員30人未満のベンチャーは、この表に入っていない
  • 「研修がない」ことと「育たない」ことは同じではない。少人数の企業では、先輩と同じ仕事をしながら教わる形になることもある

研修の有無より、1年目に誰から、どのくらいの頻度で教わるかを聞くほうが、育つかどうかの判断に近づきます。任される範囲とフィードバックの量の見方は、ベンチャーで成長できるのは本当かで整理しています。

理由2:休めない・激務

次に、有給休暇の取得状況を企業規模別に見ます。

企業規模1人平均の取得日数取得率
30~99人11.3日64.9%
100~299人11.7日65.5%
300~999人12.3日66.8%
1,000人以上12.8日69.0%

出典:厚生労働省「令和7(2025)年就労条件総合調査」(新しいタブで開きます)。常用労働者30人以上の民営企業が対象で、2024年1年間の実績。

30~99人と1,000人以上の差は、取得日数で年1.5日です。規模による差はありますが、大きくはありません。

一方で、働き方は1社目を辞める理由の上位に入ります。大卒で初めて勤務した会社を辞めた人が挙げた理由(3つまでの複数回答)の1位は、「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」で32.8%でした(厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査」(新しいタブで開きます)。2023年10月1日時点の15~34歳の若年労働者のうち、最終学歴が大学で、初めて勤務した会社を辞めた人が対象。規模別の集計ではありません)。※28卒自身の数値ではありません。

働き方は、規模に関係なく1社目の離職につながりやすい項目です。ベンチャーかどうかより、志望企業の残業時間と有給の取得日数を調べるほうが確実です。

ミニFAQ:ベンチャーは残業が多いのですか?

規模別に残業の多さを比べた、ベンチャーに限った公的な数値はありません。企業ごとの差が大きいため、前年度の月平均の残業時間を志望企業に問い合わせてください。求人票に「固定残業代」とある場合は、何時間分がいくらかを見ます。固定残業代は、その時間を超えた分が別途支払われる設計です。

給料と、会社がつぶれる心配

理由3:給料が低い

月額の平均賃金(残業代・賞与を除く)は、20~24歳で大企業25.8万円、小企業22.6万円で、差は約1割です。差が広がるのは30代以降で、40代前半では小企業が大企業の約4分の3になります(厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」(新しいタブで開きます)。新卒に限らない、その年齢の一般労働者の平均)。表の全体はベンチャーと大手はどっちがいいかに載せています。

平均では大手が高い傾向があります。ただ、ベンチャーの給与は企業ごとの差が大きく、平均だけでは判断できません。見ておきたいのは次の3つです。

  • 初任給に固定残業代が含まれていないか(含まれるなら何時間分か)
  • 昇給の仕組みと、評価の頻度
  • 入社して数年たった社員の給与水準(説明会や面談で聞ける範囲で)

理由4:すぐにつぶれる

同じ若年者雇用実態調査で、大卒が1社目を辞めた理由を見ると、「倒産、整理解雇又は希望退職に応じたため」は0.8%でした。一方で「会社に将来性がない」は13.5%です。

  • 会社がつぶれて職を失う形の離職は、1社目を辞めた大卒の中では少数
  • ただし、会社の先行きに不安を感じて自分から辞める人は約7人に1人いる

「つぶれるかどうか」は、規模ではなく事業と財務で決まります。売上や利用者の伸び、資金の状況、主な取引先を確認すると、判断の材料になります。

辞める人の多さと、転職への影響

理由5:すぐに辞める人が多い

大卒の就職後3年以内の離職率は、事業所規模1,000人以上で27.0%、30~99人で41.9%、全体で33.8%です(厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」(新しいタブで開きます)、2025年10月24日公表)。規模が小さいほど高い傾向があります。

ただ、これは事業所の規模別の数値で、ベンチャーの離職率ではありません。また、大手でも約4人に1人は3年以内に辞めています。離職率の高さだけでは、合わなくて辞めたのか、次の職場を決めて移ったのかは分かりません。

志望企業については、直近3年の新卒の採用者数と離職者数、そして辞めた人がどこへ移ったかを聞くと、数字の意味が見えてきます。

理由6:転職で不利になる

「ベンチャー出身は転職で不利」を裏づける規模別の公的な数値はありません。中途採用で見られるのは、会社の規模より1社目で何を任され、何を身につけたかです。

  • 成果を数字や具体的な事例で説明できる経験があるか
  • 担当した仕事の範囲を、他社でも通じる言葉で説明できるか

採用する側から見た評価のされ方は、ベンチャーから転職はできるのかで詳しく整理しています。

大手と何が違うか:確かめ方の違いと、採用する側から見た聞き方

6つの理由のうち5つは、企業ごとの差が大きいものでした。つまり「やめとけ」が自分に当てはまるかは、志望企業の情報を集めてはじめて分かります。ここで、大手とベンチャーでは情報の集め方が違います。

知りたいこと大手で見つけやすい情報ベンチャーでの調べ方
研修・育成採用サイトに研修の体系を載せている企業がある研修の有無と内容を求める。1年目に誰から教わるかを社員に聞く
残業・休暇統合報告書や採用サイトに実績を載せる企業がある前年度の月平均残業時間と、有給の平均取得日数を求める
新卒の定着就職情報誌などに数値を載せている企業がある直近3年の新卒採用者数・離職者数と、平均勤続年数を求める
事業の先行き決算資料が公開されている売上や利用者の伸び、資金調達の状況を面談で聞く

大手は公開資料から分かることがあり、ベンチャーは聞かないと分からないことがある、という違いがあります。

若者雇用促進法で、企業に求められる情報

新卒を募集する企業は、企業の規模を問わず、応募者などから求めがあった場合、次の3つの類型それぞれについて少なくとも1項目の情報を提供する必要があります。全項目の開示が義務になっているわけではありません(厚生労働省「職場情報の提供制度」(新しいタブで開きます)、厚生労働省「若者雇用促進法の主な内容」(新しいタブで開きます))。

類型主な項目対応する「やめとけ」の理由
(ア)募集・採用に関する状況直近3事業年度の新卒採用者数・離職者数、平均勤続年数5 すぐに辞める人が多い
(イ)職業能力の開発・向上に関する取組研修の有無及び内容、メンター制度の有無など1 研修・教育の仕組みがない
(ウ)職場への定着の促進に関する取組前事業年度の月平均所定外労働時間、有給休暇の平均取得日数など2 休めない・激務

提供が義務になるのは各類型で1つ以上のため、どの項目が出てくるかは企業によって違います。知りたい項目を具体的に挙げて求めると、答えが返ってきやすくなります。

面談や説明会での聞き方

離職者数や残業時間は、聞きにくいと感じる人が多い項目です。質問の目的を添えると、意図が伝わりやすくなります。

  • 「1年目にどのように仕事を覚えていくのかを知りたいので、研修や教える役割の方がいれば教えてください」
  • 「入社後の働き方を具体的に想像したいので、前年度の月平均の残業時間を教えていただけますか」
  • 「新卒で入った方が、3年ほどでどのような仕事を任されているかを知りたいです」

面接での質問の準備全般は、28卒の面接対策は何をすればいいかで扱っています。

就活生

説明会で離職者数や残業時間を聞いたら、印象が悪くなりませんか?

ベンチャールーキーズ編集部

若者雇用促進法では、応募者から求められた場合、企業は新卒の採用者数・離職者数や研修、残業時間などの情報を、類型ごとに1つ以上提供することになっています。聞くこと自体は、制度が想定している行動です。

気になる場合は、数字だけを聞くのではなく、「1年目の働き方を具体的に想像したいので」と目的を添えてください。数字と一緒に、辞めた人の理由やその後の進路も聞けると、その企業が自分に合うかどうかの判断材料が増えます。

志望企業で何を確かめればいいか、自分の場合に当てはめて一緒に整理できます

状況別の考え方

ケース1:親や家族に「ベンチャーはやめとけ」と言われた

家族の心配は、6つの理由のどれかにあたることが多くあります。何が心配なのかを具体的に聞き、その項目を志望企業で確かめた結果を伝えると、話し合いが進みやすくなります。たとえば「つぶれないか」なら事業の伸びと資金の状況、「休めるのか」なら有給の取得日数です。

ケース2:大手の内定もあって迷っている

「やめとけ」の理由が自分に当てはまるかを確かめたうえで、1社目で何を得たいかに戻って比べてください。比べ方の順番は、ベンチャーと大手はどっちがいいかで整理しています。確かめた結果、大手を選ぶことも十分に納得できる判断です。

ケース3:ネットやSNSで見て不安になった

ネット上の「やめとけ」には、書いた人の1社での経験にもとづくものもあり、その会社の規模や業種が分からない場合があります。この記事の6つの理由の表と照らし合わせ、規模の差が大きい理由(研修)と、企業ごとの差が大きい理由(それ以外)に分けて考えてください。就活全体の進め方に不安がある場合は、28卒の就活は何から始めるべきかも参考になります。

ケース4:将来は起業も考えている

起業を見据える場合、研修の手厚さより、事業を立ち上げる過程に近い位置で働けるかを重く見る人もいます。1社目の選び方は、ベンチャー就職は起業の近道かで整理しています。

よくある失敗と対策

失敗なぜ起きるか対策
「やめとけ」の一言で、ベンチャーを候補から外す理由を分けずに、まとめて受け止める6つの理由に分け、自分が気にしている理由を1つずつ確かめる
規模の平均を、志望企業に当てはめる公的データは規模別の平均しかない平均は目安にとどめ、志望企業の数値を求める
離職率の数字だけで判断する辞めた理由とその後が見えていない離職者数と一緒に、辞めた理由と移った先を聞く
研修の有無だけで育つかを判断する研修がない=育たない、と考える1年目に誰から、どのくらいの頻度で教わるかを聞く

判断する前のチェックリスト

  • 自分が気にしている「やめとけ」の理由を、6つの中から選んだ
  • 研修の有無と内容、1年目に教わる相手を確認した
  • 前年度の月平均の残業時間と、有給の平均取得日数を確認した
  • 初任給に固定残業代が含まれるか、含まれるなら何時間分かを確認した
  • 直近3年の新卒の採用者数・離職者数と、辞めた人の移った先を聞いた
  • 事業の伸びと、資金の状況を確認した

よくある質問

新卒でベンチャーに行くのは、やめたほうがいいですか?

一律にやめたほうがいいとは言えません。「やめとけ」と言われる6つの理由のうち、公的データで規模の差がはっきり出るのは研修だけで、休みやすさ・給料・会社の存続などは企業ごとの差が大きい項目です。気になる理由を、志望企業の情報で1つずつ確認してから判断すると迷いが減ります。

ベンチャーは研修がないというのは本当ですか?

規模が小さいほど、研修を行う事業所の割合は低い傾向があります。厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」では、正社員にOFF-JTを行った事業所は30~49人の企業で53.0%、1,000人以上で85.4%でした。30人未満の企業は調査の対象外です。

ベンチャーは休みが取れないのですか?

厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」では、2024年の有給休暇の1人平均取得日数は30~99人の企業で11.3日、1,000人以上で12.8日で、差は年1.5日程度でした。休みやすさは企業ごとの差が大きいため、志望企業の取得日数を見るほうが判断に役立ちます。

ベンチャーはつぶれやすいので危ないですか?

厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査」では、大卒で初めて勤務した会社を辞めた人のうち、理由に倒産・整理解雇・希望退職を挙げた人は0.8%でした。会社の先行きは規模ではなく事業と財務で決まるため、売上の伸びや資金の状況を確認してください。

企業に離職者数を聞いても答えてもらえますか?

若者雇用促進法では、新卒を募集する企業は、応募者などから求められた場合、採用・離職の状況、研修などの取組、残業時間などの3つの類型ごとに1つ以上の情報を提供することが義務です。どの項目が出るかは企業によるため、知りたい項目を具体的に挙げて求めてください。

ベンチャーに入ると、転職で不利になりますか?

会社の規模で決まる公的な数値はありません。中途採用では、1社目で何を任され、何を身につけたかが評価の中心になります。成果を数字や事例で説明できる経験を積めるかを、入社前に聞いておくと安心です。

「やめとけ」と言う人の意見は、無視していいですか?

無視する必要はありません。意見の中に、自分も気にするべき理由が含まれていることがあります。何が心配なのかを具体的に聞き、その項目を志望企業で確かめる材料にしてください。

ベンチャーと大手で迷ったら、何から考えればいいですか?

まず1社目で何を得たいかを1つ決め、その条件で個別の企業を比べる方法があります。仕事の基礎を体系的に学びたいのか、早い時期から任されたいのかで、合う企業は変わります。

まとめ

この記事の要点
  • 「新卒でベンチャーはやめとけ」の理由は、研修・休めない・給料・倒産・離職・転職の6つに分けられる
  • 公的データで規模の差がはっきり出るのは研修。30~49人の企業でOFF-JTを行った事業所は53.0%
  • 有給の取得日数の規模差は年1.5日程度。1社目を辞めた大卒のうち、倒産等を理由に挙げた人は0.8%
  • 6つのうち5つは、規模の平均より企業ごとの差が大きい。判断は志望企業の情報で行う
  • 若者雇用促進法では、求めがあれば企業は3つの類型それぞれについて少なくとも1項目の情報を提供する。知りたい項目を具体的に挙げて求める
  • 確かめた結果、大手を選ぶこともベンチャーを選ぶことも、どちらも納得できる判断

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ベンチャールーキーズ編集部
公的機関や調査会社が公表しているデータをもとに記事を作成しています。ES添削・面接対策などの相談には、新卒採用の選考に携わってきたメンバーが対応します。

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