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大手かベンチャーか

ベンチャーの安定性はどうなのか、新卒が5つの軸で見る『安定』の中身

公開 更新 この記事は約19分で読めます

「ベンチャーは安定していない」と言われるのは、事業の持続性・雇用・給与・働き方・社会的信用のどれかが大手より揺れやすいと見られているためです。安定の中身を5つに分けて公的データで確かめ、新卒が入社前に見るべき4つの軸を整理します。

先に結論

  • 対象は、ベンチャー企業に興味があるものの「安定していないのでは」という不安が残っている大学生・大学院生です。「新卒カード」の視点で迷っている人はベンチャー新卒はもったいないのか、新卒カードの価値と4つの判断軸が近い論点をまとめています
  • 「安定」は1つの言葉で、実際は①事業の持続性 ②雇用(倒産・解雇) ③給与と待遇 ④働き方 ⑤社会的信用の5つが混ざっています。どれが自分にとっての安定かを決めないと、ベンチャーが安定していないかの判断は進みません
  • マイナビ「2027年卒 大学生就職意識調査」では企業選択で「安定している会社」を挙げた学生が55.4%で8年連続最多、大手志向は50.9%です(出典は本文)。安定志向は多数派ですが、全員にとって同じ中身を指しているわけではありません
  • 公的データで比較できるのは主に離職率と事業所規模別の勤続傾向で、「ベンチャーの数値」としてまとめた公的統計はありません。事業所規模が小さいほど3年以内離職率は高くなる傾向があります
  • 新卒が入社前に確認する軸は、①事業の持続性 ②雇用契約と労働条件 ③給与の仕組み ④会社の情報開示の4つです。この4軸で確かめられる範囲まで事実レベルを下げると、「安定していない」が自分に当てはまるかを整理できます

この記事で分かること

  • 「安定」という言葉が指す5つの中身と、それぞれが大手とベンチャーでどう違うか
  • 大卒就職率・事業所規模別の離職率・若者雇用促進法に基づく職場情報の提供制度など、安定性を確かめるときに使える公的データ
  • ベンチャー・スタートアップ・中小企業の違い(法律上の定義のあり/なし)と、「ベンチャー=不安定」と単純化できない理由
  • 安定を重視する新卒が入社前に見る4つの軸と、確認する項目の順番
  • ケース別の整理(親に反対されている・大手を併願中・公務員も検討中)
  • 入社前のよくある失敗3つと、面接・内定承諾前の確認チェックリスト

ベンチャーと大手で迷っている段階で、自分にとっての「安定」の中身を具体的に言語化できます。志望企業の決算・資金調達・雇用契約の読み方など、入社前に確かめたい点を一緒に整理する相談です

「ベンチャーは安定していない」の『安定』を5つに分ける

結論から言うと、「安定」は1つの言葉で、実際は複数の意味が混ざっています。安定の中身を分けないまま「ベンチャーは安定していない」を論じると、本当に自分が気にしている不安がどこにあるかが分からなくなります。

安定の5つの中身

公開情報の整理では、就活で語られる「安定」はおおむね次の5つに分かれます。

#安定の中身具体的に指すもの大手で比較的担保されやすい点
①事業の持続性会社の売上・資金調達・事業領域の継続複数事業・歴史・大企業の信用で揺れが小さいとされる
②雇用(倒産・解雇)会社が続き、簡単に解雇されない大企業ほど3年以内離職率が低い傾向(公的データ)
③給与と待遇月給・賞与・退職金・住宅手当などの金銭大企業ほど賃上げ余力・退職金制度が整う傾向
④働き方残業時間・休日・配属・転勤就業規則が整備され、変化の予測がつきやすい
⑤社会的信用ローン・クレジット・結婚・親の受け止め社名で判断されやすい(大手のネームバリュー)

どれを「安定」と呼ぶかで、ベンチャーが安定していないかの判断は変わります。たとえば③の給与の総額だけを見れば大手の方が安定していますが、④の働き方(自分の裁量で動けるか)までを含めて考えると、評価の軸が変わります。安定の中身を分けずに不安だけが先に立つと、「周囲が大手だから自分も大手」という結論に流れやすくなります。

安定志向は多数派だが、中身は人によって違う

マイナビの「2027年卒 大学生就職意識調査」では、企業選択のポイントで「安定している会社」を挙げた学生が55.4%(前年比3.5ポイント増)で8年連続の最多、大手企業志向は50.9%(前年比0.9ポイント減)と報告されています(出典:マイナビキャリアリサーチLab 2027年卒大学生就職意識調査(2026年4月24日公表)(新しいタブで開きます))。マイナビ会員へのWEB調査(有効回答37,160名)で、マイナビの利用者に偏る点に注意が必要ですが、安定志向が多数派であることは示されています。

ただし、調査では「安定」の中身の内訳までは示されていません。親世代のイメージで「安定=大手」と答えた学生もいれば、「倒産しない会社」を安定として選んだ学生、「自分の生活リズムが保てる会社」を安定として選んだ学生も混ざっています。同じ『安定』でも指すものが人によって違うことを前提に、自分にとっての安定の中身を言語化するのが先です。「新卒でベンチャーはやめとけ」は本当か、6つの理由を公的データで確かめるでも、安定不安を含む「やめとけ」の論点を公的データで整理しています。

公的データで見る「ベンチャーの安定性」

公的データで「ベンチャー」を区分にした集計はほぼありません。代わりに事業所規模別・企業規模別のデータから、安定性に関わる傾向を読み取ることができます。この章では、事業所規模別の離職率、既卒3年の企業向け要請、職場情報の提供制度の3つを順に確認します。

事業所規模が小さいほど、3年以内離職率は高くなる傾向

厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」(令和4年3月卒)によると、新規大卒就職者の就職後3年以内の離職率は33.8%で、事業所規模別の内訳は次のとおりです(出典:厚生労働省 新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)報道発表PDF(新しいタブで開きます))。

事業所規模(大卒)3年以内離職率
5人未満57.5%
5~29人52.0%
30~99人41.9%
100~499人33.9%
500~999人31.5%
1,000人以上27.0%

事業所規模が小さいほど離職率が高いという傾向はありますが、ここでいう「事業所」は会社全体ではなく、所属する事業所ごとの人数です。大企業の小さな支店も「5~29人」に含まれますし、ベンチャーでも本社に数百人いれば500人以上の規模に入ります。「ベンチャーの離職率」そのものを示すデータではありません。離職率の読み方や面接での聞き方はベンチャーの離職率はどう見るか、公的データの読み方と面接での質問にまとめています。

雇用の安定を気にするなら、この離職率データは「規模が小さい事業所では離職が起きやすい」という傾向までを示す材料として読み、志望企業ごとの実数は後述の職場情報の提供制度で個別に確かめるのが安全です。

既卒3年以内を新卒枠で受け入れるよう、企業に要請されている

ベンチャーに入って合わなかったときの「戻りやすさ」も、安定を考える材料の1つです。就職問題懇談会(文部科学省掲載)の企業向け要請文では、「卒業・修了後少なくとも3年間は、新卒の採用枠に応募できる募集条件を設けるよう求めている」と明記されています(出典:文部科学省 令和9年度大学、短期大学及び高等専門学校卒業・修了予定者に係る就職について(企業等向け要請PDF)(新しいタブで開きます))。

これは企業への要請であり、学生側に一律で保障された制度ではありません。法的拘束力はなく、既卒枠を実際に設けているかは企業ごとに違います。応募できたとしても、入社後に積んだ職務経歴の中身で評価される点は変わりません。それでも、新卒カードは「卒業する年の1回限り」ではなく、3年の猶予を前提にした採用の受け皿を企業に求める流れが続いている点は、ベンチャー1社目で合わなかった場合の経路として知っておく価値があります。ベンチャー出身者の転職市場での評価はベンチャーから転職はできるのか、新卒1社目の経験がどう評価されるかにまとめています。

職場情報の提供制度で、応募前に離職率と残業時間を確かめられる

若者雇用促進法(青少年の雇用の促進等に関する法律)に基づく「青少年雇用情報」の提供制度では、学生から求めがあった場合に、企業は3類型それぞれから1つ以上の職場情報を提供することが求められています。応募前・内定承諾前に離職率や残業時間を確かめる根拠として使えます(出典:厚生労働省 青少年の雇用の促進等に関する法律に基づく事業主等指針(職場情報の提供制度ページ)(新しいタブで開きます))。

分類具体的な項目
① 募集・採用に関する状況直近3事業年度の新卒採用者数・離職者数、平均勤続年数
② 職業能力の開発・向上に関する取組研修、メンター制度、キャリアコンサルティング制度の有無
③ 職場への定着の促進に関する取組月平均所定外労働時間(残業)、有給休暇の平均取得日数、育休の取得者数
  • 就職活動中にエントリーシートの送付や会社説明会への参加などの応募・問い合わせを行った学生から求めがあれば、企業は少なくとも各類型から1つずつ以上の情報を提供する仕組みです
  • 対象は新卒・既卒者を募集する全ての事業主で、企業規模にかかわらず対応が求められています(この点はベンチャーも大手も同じ)
  • 情報の正確性は企業の自己申告ベースで、第三者が検証した数字ではありません。採用ページでの自主的な公表状況は企業ごとに差があるため、具体的な数字が公開されていない場合は、採用担当や説明会で求める必要があります

安定性が気になるなら、この制度を使って志望企業の①~③を具体的な数字で聞くのが近道です。「安定していない気がする」のままにせず、応募前の時点で数字を取りに行くほうが、入社後の違和感を減らせます。

ベンチャー・スタートアップ・中小企業の違いと「不安定」の誤解

結論から言うと、「ベンチャー」「スタートアップ」「中小企業」はそれぞれ指すものが違い、「ベンチャー=中小企業=不安定」は単純化しすぎです。混同したまま安定性を論じると、志望先の実態と判断がずれます。

3つの言葉の整理

  • 中小企業:中小企業基本法で定義された範囲(製造業その他は資本金3億円以下または従業員300人以下など)。資本金と従業員数のどちらか一方を満たせば中小企業者に当たります(出典:中小企業庁 中小企業・小規模企業者の定義(新しいタブで開きます))
  • ベンチャー:法律上の定義はない。一般には、新しい事業領域で成長を狙う企業を指す言い方として使われています。中小企業と重なる会社もあれば、資金調達後に大企業規模に成長したメガベンチャーもあります
  • スタートアップ:法律上の定義はない。短期間での急成長を狙い、ベンチャーキャピタル等からの資金調達を前提にすることが多い企業を指す言い方として使われています

中小企業の中にも、歴史が長く離職率が低い会社はたくさんあります。ベンチャーの中にも、売上規模が大企業に近いメガベンチャーは存在します。「中小=不安定」「ベンチャー=不安定」とまとめると、志望企業ごとの違いが見えなくなります。ベンチャー企業と中小企業の違い、就活生が見分ける3つの切り口と4つのサインに、両者の見分け方をまとめています。

「不安定」が指す中身を志望企業で確かめる

志望企業ごとに不安定性の中身は違います。例えば、アーリー期スタートアップは資金調達の調達次第で事業規模が変動する傾向があり、事業の持続性のリスクが大きい一方で、成長期ベンチャーは売上の実績がすでにあり、持続性のリスクはアーリー期より小さくなります。スタートアップ新卒のリスク5つ、アーリー期ならではの注意点と準備で、アーリー期特有のリスクを整理しています。

志望企業の規模・ステージを把握せずに「ベンチャーは不安定」でまとめると、本来とるべき判断の順番が省かれます。「どの中身の不安定さが、志望企業に当てはまるか」まで下ろしてから判断する流れが安全です。

就活生

ベンチャーに興味はあるけど、親からは「安定していないからやめた方がいい」と言われる。公務員を勧められているが、自分が本当に求めている安定が何なのかも分からない

ベンチャールーキーズ編集部

「安定」は1つの言葉ですが、人によって指すものが違います。本記事で挙げた5つの中身(事業の持続性・雇用・給与・働き方・社会的信用)を順に見て、自分がどれを一番心配しているかを決めるのが先です。マイナビの調査で安定志向が55.4%とされているとおり、安定を重視すること自体は多数派の判断です。重視した結果として大手を選ぶのも、ベンチャーの中で安定性を確かめて選ぶのも、どちらも成立します。「ベンチャー=不安定」で判断を打ち切るのではなく、志望企業の情報(職場情報の提供制度で聞ける数字・決算・資金調達履歴)を自分で確かめてから判断する流れだと、入社後の違和感を減らせます。

自分にとっての「安定」の中身を言語化してから、ベンチャーと大手の比較に進める相談です。価値観の整理から始めるので、「周囲が勧めるから」ではなく「自分が納得できる」1社目の選び方を一緒に考えられます

安定を重視する新卒が確認する4つの軸

結論から言うと、安定を重視する新卒が入社前に確認する軸は、①事業の持続性 ②雇用契約と労働条件 ③給与の仕組み ④会社の情報開示の4つです。1つずつ分けて確かめると、「安定していない気がする」をデータに基づいた判断に変えられます。

軸1:事業の持続性

入ろうとしている会社の事業が、入社後数年以上続く見込みがあるかを確認します。公開情報の範囲でも次の材料を揃えられます。

  • 直近3期の売上・利益(上場企業は決算短信・有価証券報告書、非上場企業は採用資料・会社HP・プレスリリースや官報掲載の決算公告など公開情報を確認)
  • 資金調達のステージ(シード・シリーズA・シリーズB以降か)
  • 事業領域の需要の推移と、競合企業の数
  • 単一事業に依存しているか、複数の収益源があるか

非上場企業では決算情報が公開されていないケースが多く、確認できる情報は限られます。業績の調べ方は非上場ベンチャーの業績や将来性を就活生が調べる方法もあわせて参照できます。企業全般の見極め方はベンチャー企業の見極め方、新卒が入社前に何をどこで確かめればいいかにまとめています。

軸2:雇用契約と労働条件

内定時に提示される労働条件通知書・雇用契約書で、以下の項目を具体的に確認します。

  • 雇用の期間(期間の定めがないか、ある場合は何年か)
  • 試用期間の長さと、本採用との条件差
  • 固定残業代の有無・時間数・金額
  • 配属の決まり方(本人の希望・事業部ごとの採用・入社後に決定)
  • 退職金制度の有無

固定残業代(みなし残業)は「その時間を超えた分は別途支払われる設計」で、「残業代が出ない」仕組みではありません。表示ルールは職業安定法に基づく指針で定められています。固定残業代の時間数と金額を比較すると、同じ基本給の求人でも実際の労働時間と総支給額が大きく変わることがあります。

軸3:給与の仕組み

月給の総額だけでなく、昇給・賞与・退職金・住宅手当・ストックオプションなどを合わせて見ます。ベンチャーでは基本給が大手より抑えられている代わりに、ストックオプションや成果連動の賞与で設計している会社もあります。

  • 月給(固定残業代込みか・込みなら時間数と超過分の支払いルール)
  • 昇給の仕組み(年次昇給・評価連動)
  • 賞与(確約されたものか・業績連動か)
  • 退職金・企業年金の有無
  • 住宅手当・社宅・通勤手当
  • ストックオプション(付与条件・権利行使の時期)

安定を給与の総額で測るなら、月給の額面だけで判断せず、昇給・賞与・退職金を含めた長期の見通しで比較する必要があります。短期的には大手の方が総額が安定しやすい一方で、ベンチャーで成果連動の賞与や付与されたストックオプションの価値が大きくなるケースもあります。年収の見方はベンチャーの年収は上がるのか、昇給と評価制度の見方にまとめています。

軸4:会社の情報開示

安定を事前に確かめたい人は、情報開示の姿勢そのものを軸に加えると判断しやすくなります。

  • 若者雇用促進法に基づく職場情報(新卒採用者数・離職者数・平均勤続年数・残業時間・有給取得日数など)を具体的に出せるか
  • 選考過程で質問に対する回答がはっきりしているか、曖昧な返答にとどめていないか
  • 面接官・採用担当以外(配属予定部署の社員)と話す機会があるか
  • 内定後のフォローで、入社後3か月・6か月の目安業務が開示されるか

情報を出さない会社は「出せない事情がある」のか「公表の仕組みを整えていない」のかの違いもあり、断定はできませんが、応募前・内定承諾前の確認を省くと、入社後の違和感の原因になることがあります。親ハブのベンチャーと大手はどっちがいいか、新卒の1社目を決める判断の順番で、1社目を選ぶときの判断の順番を全体像としてまとめています。

ケース別:安定不安への向き合い方

親から「ベンチャーは不安定だから大手にしなさい」と言われている

親世代の「安定」は、新卒一括採用・終身雇用・年功序列を前提とした時代の記憶が反映されていることが多くなります。「安定」の中身を具体的に(事業の持続性か、雇用か、給与か、社会的信用か)聞くと、話が噛み合いやすくなります。親との話し合いの進め方はベンチャー就活を親や周囲に反対されたら、話し合いの順番と伝え方の材料にまとめています。

大手を併願していて、どちらに行くか決めかねている

安定の総合点では大手が有利な場面が多くなりますが、どの安定を重視するかで答えは変わります。両方に内定した段階での判断の順番は大手とベンチャーの両方に内定したときの決め方、新卒が1社目を選ぶ順番にまとめています。「もったいない」で迷っている場合はベンチャー新卒はもったいないのか、新卒カードの価値と4つの判断軸が近い論点です。

公務員も検討していて、安定を重視している

公務員は雇用の安定(身分保障)という点では強い選択肢ですが、仕事の裁量や成果の見え方は大手・ベンチャーと別の軸で考える必要があります。公務員とベンチャーの比較は公務員かベンチャーか、安定を重視する就活生が比べたいことで、安定の軸ごとに整理しています。

やりたいことがまだ決まっていない

目標が決まっていない段階で「安定していないから」でベンチャーを外すと、自分が本当に欲しい安定の中身が見えないまま結論が出てしまいます。先に自己分析で軸を言語化してから、ベンチャー・大手・公務員のどれが近道かを選ぶ順番が安全です。軸の作り方は就活でやりたいことがないときの会社の選び方、嫌なこと3つから軸をつくる手順にまとめています。

ベンチャーに向いている性質・向いていない性質を可視化してから進めたい場合は、ベンチャー適性診断(14問・約3分)で自分がどちら寄りの性質かを確かめてから、1社目を考える流れもあります。

よくある失敗と対策

失敗1:「ベンチャー=不安定」でまとめて、志望企業ごとの実態を見ない。 事業規模・資金調達ステージ・業界の違いを無視して、ベンチャー全体を1つのカテゴリで判断するパターンです。対策は、志望企業の決算・資金調達履歴・求人の継続性を具体的に調べることです。アーリー期スタートアップと成長期ベンチャーでは、持続性のリスクの性質が違います。

失敗2:月給の額面だけで給与の安定を判断する。 固定残業代込みの額面と、昇給・賞与・退職金・ストックオプションを含めた長期の見通しを混同するパターンです。対策は、労働条件通知書の固定残業代の時間数・金額と、昇給の仕組み・賞与の設計を具体的に確認することです。同じ額面でも、含まれる残業時間数で実質の時給が変わります。

失敗3:情報開示の少ない会社に「ベンチャーだから仕方ない」で入ってしまう。 離職率・残業時間・勤続年数を出さない会社に対し、「ベンチャーだから」で諦めて確認を省くパターンです。対策は、若者雇用促進法に基づく職場情報の提供制度を使って、応募前・内定承諾前に具体的な数字で聞くことです。情報を出すのを嫌がる会社は、入社後も情報の共有が少ない可能性があります。

入社前のチェックリスト

  • 自分にとっての「安定」の中身を5つのうちどれかに言語化した
  • 志望企業の直近3期の売上・利益・資金調達ステージを確認した
  • 労働条件通知書で、固定残業代の時間数・金額、試用期間、退職金制度を確認した
  • 若者雇用促進法に基づく職場情報(離職者数・平均勤続年数・残業時間)を具体的な数字で確かめた
  • 合わなかったときに評価される職務経歴を、1社目で積めるかを確認した

よくある質問

ベンチャーは本当に安定していないのですか

「安定」が指す中身によって答えが変わります。事業の持続性・給与の総額・社会的信用の面では大手の方が担保しやすい傾向がありますが、働き方の予測可能性や自分の裁量で動ける範囲まで含めると、評価の軸が変わります。志望企業ごとの実態を公開情報と職場情報の提供制度で確かめてから判断する流れが安全です。

「ベンチャーの離職率」のデータはありますか

公的統計で「ベンチャー」を区分にした離職率はありません。厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況」は事業所規模別の集計で、「ベンチャーの離職率」そのものを示すものではありません。志望企業ごとの離職率を確かめたい場合は、若者雇用促進法に基づく職場情報の提供制度で、過去3事業年度の新卒採用者数と離職者数を聞くのが近道です。

ベンチャーに入って、会社が倒産したらどうなりますか

会社が倒産した場合、未払いの賃金について一定額までが「未払賃金立替払制度」(厚生労働省所管、独立行政法人労働者健康安全機構が運営)で立替払いされる仕組みがあります。退職後の失業給付(雇用保険)も、要件を満たせば受給できます。ただし立替払いの対象期間や金額には上限があり、全額が保障されるわけではありません。倒産後の再就職は、文科省掲載の企業向け要請で卒業後少なくとも3年間は新卒採用枠への応募が受け入れられるよう求められていることもあり、第二新卒・既卒枠で応募できる経路があります(受け入れの状況は企業ごとに異なります)。

大手の方が「安定している会社」として選ばれているのですか

マイナビの「2027年卒 大学生就職意識調査」では、企業選択で「安定している会社」を挙げた学生が55.4%、大手志向は50.9%です。安定志向と大手志向は近い傾向を示していますが、「安定=大手」と全員が答えているわけではありません。「規模が小さくても長く続いている会社」「業績が安定している中堅企業」を安定と見る学生もおり、安定の中身は人によって違います。

ベンチャーで固定残業代が高めに設定されているのは不安定の表れですか

固定残業代の時間数が大きいかどうかは、業界や職種にもよるため一概には判断できません。確認したいのは、「その時間を超えた分は別途支払われる設計になっているか」「表示ルール(職業安定法に基づく指針)に沿って基本給と固定残業代が分けて書かれているか」です。基本給と残業代の区別が不明確な求人は、入社後のトラブルの原因になりやすい点に注意が必要です。

ベンチャーの退職金はどうなっていますか

退職金制度は法律上の義務ではなく、会社ごとに設計が違います。ベンチャーでは、退職金制度を設けていない代わりに月給や賞与、ストックオプションに回している会社が多いとされます。退職金の有無・設計は求人票や採用ページだけでは分からないことがあるため、内定承諾前に労働条件通知書や就業規則で確認するのが安全です。

安定を重視するなら、公務員が一番ですか

雇用の安定(身分保障)という点では公務員は強い選択肢です。一方で、仕事の裁量・成果の見え方・配属の柔軟性は、大手・ベンチャーと別の軸で考える必要があります。「安定=公務員」で結論を出す前に、自分が重視する安定の中身(事業の持続性・雇用・給与・働き方・社会的信用)を言語化してから判断する流れが安全です。

ベンチャーで働きながら安定した生活をするのは難しいですか

難しいかどうかは、会社の事業ステージ・報酬体系・配属される役割によって変わります。給与が成果連動の割合が大きい会社では、月々の変動が大きくなることがあります。生活リズムの予測可能性を重視するなら、固定給の割合が高く、残業時間が月平均で開示されている会社を選ぶ流れが安全です。

新卒で安定志向のままベンチャーに入ってよいのでしょうか

安定志向であることと、ベンチャーに入ることは、両立し得る組み合わせです。重視する「安定」が働き方の裁量や成長の機会である場合、ベンチャーの方が目的に合うことがあります。重視する「安定」が給与の総額や社会的信用である場合、大手の方が目的に合うことが多くなります。自分の安定の中身と、志望企業の実態の両方を照らし合わせてから判断します。ベンチャーに向いてる人・向いてない人、新卒が自分で判断する4つの軸に、向き不向きの判断軸をまとめています。

安定した会社かを面接で聞いても大丈夫ですか

大丈夫です。むしろ職場情報の提供制度は、学生から求めがあることを前提にした仕組みです。「過去3年の新卒採用者数と離職者数」「平均勤続年数」「月平均の所定外労働時間」「有給取得日数」などを、具体的な数字で聞く形にすると、答えが曖昧になりにくくなります。面接で聞きづらい場合は、人事部やキャリアセンターを通じて書面で確認する方法もあります。

まとめ

ベンチャーが安定していないかの判断は、「安定」の中身を分けてから進めると整理が早くなります。1つの言葉のまま論じると、周囲の意見や親世代のイメージに流れやすく、自分にとっての安定が何なのかが見えなくなります。

  • 「安定」は①事業の持続性 ②雇用 ③給与と待遇 ④働き方 ⑤社会的信用の5つに分かれる。どれを重視するかで、ベンチャーが安定しているかの答えは変わる
  • マイナビ調査で安定志向は55.4%と多数派だが、中身は人によって違う。親世代のイメージをそのまま受け取らず、自分で言語化する
  • 公的統計で「ベンチャーの数値」は無く、事業所規模別の離職率データ(1,000人以上27.0%・5人未満57.5%)から傾向を読み取る形になる。志望企業ごとの実数は職場情報の提供制度で聞く
  • 新卒が入社前に確認する軸は①事業の持続性 ②雇用契約と労働条件 ③給与の仕組み ④会社の情報開示の4つ
  • 文部科学省掲載の企業向け要請では、卒業後少なくとも3年間は新卒採用枠に応募できる募集条件を設けるよう求められており、合わなかったときの経路として知っておく
  • 次のステップは、自分の「安定」の中身を5つから選ぶこと。目標が決まっていなければ、ベンチャー適性診断(14問・約3分)で自分の性質を可視化してから、安定の軸を決める順番が安全

関連記事:ベンチャーと大手はどっちがいいか、新卒の1社目を決める判断の順番、「新卒でベンチャーはやめとけ」は本当か、6つの理由を公的データで確かめる、ベンチャー新卒はもったいないのか、新卒カードの価値と4つの判断軸、ベンチャーの離職率はどう見るか、公的データの読み方と面接での質問、ベンチャー企業の見極め方、新卒が入社前に何をどこで確かめればいいか。

運営:株式会社ヘルスベイシス/ベンチャールーキーズ編集部

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ベンチャールーキーズ編集部
公的機関や調査会社が公表しているデータをもとに記事を作成しています。ES添削・面接対策などの相談には、新卒採用の選考に携わってきたメンバーが対応します。

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