ベンチャー社員へのOB訪問、探し方7つと聞くべき4つの軸と注意点

ベンチャー社員へのOB・OG訪問は、大学OB名簿では探しにくく、マッチングサービスや採用担当経由など複数ルートの使い分けが必要です。探し方7つと、聞くべきこと4つの軸、カジュアル面談との使い分け、ハラスメント対策までを公的データで整理します。
先に結論
- 対象は、ベンチャー企業に関心があり、OB・OG訪問で何をどう進めればよいかを整理したい大学生・大学院生です。企業の見極め全般の判断軸はベンチャー企業の見極め方、新卒が入社前に何をどこで確かめればいいかにまとめています
- ベンチャーのOB・OG訪問は、大手と違って大学OB名簿では見つけにくいため、マッチングサービス・採用担当経由のカジュアル面談・SNSなど7つのルートを使い分けます
- 聞くべきことは一般的な「仕事内容」「社風」ではなく、①事業の持続性 ②配属と、入社1・2年のあいだに広がる業務 ③教育体制と裁量の渡し方 ④組織・経営の意思決定の見え方の4つの軸に絞ります
- 2026年10月1日の法改正で、企業はOB・OG訪問を含む就職活動の場でのハラスメント防止が義務になりました。相談先は都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)で、匿名で相談できます
- マナーや依頼メールは大手とベンチャーで大きく変わりません。差がつくのは、何を聞くかと、聞いた内容をどう企業研究と選考準備につなげるかです
この記事で分かること
- 大手の総合職向けOB訪問と、ベンチャー社員へのOB・OG訪問の違い(会える人数・ルート・聞くべき内容)
- ベンチャー社員のOB・OG訪問を始めるタイミングと、1社あたりの訪問回数の目安
- ベンチャー社員のOB・OGを探す7つのルートと、ルートごとの向き・不向き
- 事業の持続性・配属・業務の広がり方・組織変化の4つの軸で、具体的に聞く質問例
- カジュアル面談・インターンシップとの違いと使い分け
- 2026年10月1日施行のハラスメント防止義務化と、相談先・断る言い方
- 大手併願・地方学生など、ケース別の進め方
ベンチャーのOB・OG訪問で誰に会うか、何を聞くかを一緒に整理する相談です。志望業界と自分の優先軸をもとに、質問リストと会う順番の設計までを対話で詰められます
大手とベンチャーのOB・OG訪問、何が違うか3つ
結論から言うと、大手の総合職向けOB訪問とベンチャー社員へのOB・OG訪問は、会える人数・探す方法・聞くべき内容の3点で違います。大手で読んだ「OB訪問とは」の記事を、そのまま当てはめると、ベンチャーでは準備不足になります。
違い1:OB・OGの母数が少なく、大学OB名簿では見つかりにくい
ベンチャー企業の多くは中小企業基本法上の中小企業に当たります。中小企業庁は「中小企業の定義」で、製造業その他は資本金3億円以下または従業員300人以下などの区分を示しており、資金調達後に大企業規模に成長したメガベンチャー以外は、この定義に収まる会社が多くなります(出典:中小企業庁 中小企業・小規模企業者の定義(新しいタブで開きます))。
- 従業員数が少ないため、同じ会社に自大学の卒業生がいる確率も下がる
- 創業後の年数が浅い会社は、新卒入社してから数年のOB・OGしかいない
- 社員数が増えている途中の会社は、中途入社の社員が多く、大学の名簿では辿れない
大学のキャリアセンターでも、ベンチャー1社あたりのOB・OG情報はほとんど出てこないことがあります。「大学OB名簿で志望企業の先輩を探す」という大手就活の進め方だけでは、ベンチャー社員にはなかなか辿り着けません。
違い2:聞くべき内容は「事業・配属・業務・組織」に寄る
ベンチャー就活記事の多くはOB訪問の一般論を扱っています。ベンチャー文脈では、入社後に起きることが大手より早く・大きく変わるため、聞くべき軸が変わります。
| 項目 | 大手の総合職向けOB訪問 | ベンチャー社員へのOB・OG訪問 |
|---|---|---|
| 事業の持続性 | 複数事業・大手の信用で前提に置ける | 直近の資金調達・事業の継続性を具体的に聞く |
| 配属 | ジョブローテーションが基本 | 1社目で何に配属されるかで業務の広がり方が変わる |
| 業務の広がり | 数年単位で部署異動 | 入社数ヶ月で業務範囲が広がる会社もある |
| 組織の変化 | 大きく変わりにくい | 事業領域・組織・経営陣が1~2年で変わる |
このため、「仕事内容を教えてください」「社風を教えてください」のような大手就活の定番質問だけでは、ベンチャーの実態をつかめません。
違い3:カジュアル面談・インターンなど、代替の場が多い
ベンチャー企業は、採用担当や現場社員とのカジュアル面談(選考に直接関係しない、相互理解のための面談)を公式に設けているケースがあります。採用ページや求人媒体から直接申し込める会社もあり、OB・OG訪問以外にも社員と会う経路が複数あります。
- カジュアル面談:採用担当・現場社員と話す、選考前の非公式な場
- 1日インターン・座談会:複数の社員と話せる機会
- 選考プロセス内のリクルーター面談:会社によっては選考ステップに組み込まれている
「OB・OGと話す場」をOB訪問に限定して探すのではなく、これらの場も合わせて検討するのが現実的です。
ミニFAQ:ベンチャーでは、カジュアル面談があればOB訪問は不要ですか?
不要ではありません。カジュアル面談は会社の採用プロセスに乗った場で、採用担当や現場社員が「自社の良さ」を話しやすい構造になりやすい一方、OB・OG訪問は会社の採用プロセスとは別で、入社後のリアルな話を聞ける可能性があります。両方併用して情報源を複線化すると、入社前後のギャップを減らせます。
ベンチャー社員のOB・OG訪問を始めるタイミング
結論から言うと、ベンチャー志望なら大学3年の夏(6~9月)から冬(12月~2月)を目安に始めます。早期選考の広がりに合わせ、企業研究の仕上げに時間を使うためです。
動き出しの目安は、大学3年の夏から冬(先輩世代の傾向から)
以下の数字は26卒の先輩世代の調査です。就職白書2026では、26卒の学生のうち卒業年次の前年3月1日時点の内定率が48.4%、6月1日時点が81.6%と報告されています(出典:株式会社インディードリクルートパートナーズ リサーチセンター『就職白書2026』(2026年2月20日公表/学生調査はリクナビ会員のモニター調査で26卒回答者1,326人、企業調査回収率25.5%)PDF(新しいタブで開きます))。28卒自身の数値ではありませんが、前年3月時点で約半数が内定を得ている先輩世代の数字は、早期選考が広がっている傾向を示しています。
ベンチャーの早期選考は、サマーインターン(6~9月)やウィンターインターン(12~2月)の参加者から順に始まる会社もあります。選考の前にOB・OG訪問で業界と企業像の解像度を上げておくと、エントリーシートの質と志望理由の深さが変わります。早期選考の全体像はベンチャーの早期選考はいつから何をするか、動き出しと準備の順番にまとめています。
1人目は焦らず、志望度の高い業界・会社に絞る
- 1人目のOB訪問は、志望度の高い業界・会社から始める
- 業界が絞れていない場合は、まず業界やキャリアの方向性を広く話せる相手を1人選ぶ
- 複数の会社を比較する場合でも、1社あたり1~2人は会っておくと、人による印象の偏りを平均化できる
OB訪問を数だけ重ねても、聞きたいことが定まっていないと情報が整理されません。1人目に会う前に、自分の優先軸と、知りたい論点を書き出しておきます。
複数回会う方が、情報の深さが変わる
1回のOB訪問は30~60分が目安です。1回で全部を聞ききるのは難しいため、志望度が特に高い会社では、2~3人、または同じ人に2回会うほうが情報が深くなります。採用担当→現場社員→別部署の社員と、立場を変えて会うと、会社の中の見え方の違いが分かります。
ベンチャー社員のOB・OGを探す、7つのルート
結論から言うと、ベンチャー就活では7つのルートを組み合わせて探すのが現実的です。1つのルートに頼ると、業界と年次に偏りが出ます。
①大学のキャリアセンター・OB・OG名簿
大学ごとに、OB・OGの登録制度を運営しているケースがあります。メガベンチャーや有名ベンチャーには登録者がいる可能性があり、まず自大学のキャリアセンターで検索してもらうのが基本です。
- 使える場面:有名ベンチャー・メガベンチャー・大学と関係の深い企業
- 使いにくい場面:創業数年以内のスタートアップ、採用規模が小さい会社
- 連絡は大学経由で紹介されるのが一般的で、ハードルが低い
②OB・OG訪問向けマッチングサービス
OB訪問向けのマッチングサービスを使うと、他大学のOB・OGにも会いやすくなります。アプリ・ウェブで会員登録し、相手を検索して面談を申し込む仕組みが一般的です。
- 使える場面:自大学OBがいない会社、他大学の社員と話したい場合
- 使いにくい場面:全くの未上場・小規模スタートアップ(登録社員がいないことがある)
- サービスごとに登録社員の属性(大企業中心・ベンチャー中心)が違うので、複数併用する
③LinkedIn・XなどSNSの公開プロフィール
ベンチャーの社員は、採用の文脈でSNSを活発に使っていることが多く、X(旧Twitter)やLinkedInで会社名・職種で検索すると、公開プロフィールが出てきます。採用窓口に送る代わりに、本人にDMで依頼する方法です。
- 使える場面:採用担当や広報を公開しているベンチャー、エンジニア・デザイナーなどの職種
- 使いにくい場面:採用情報を社外に出していない会社、投稿が少ないアカウント
- 丁寧な自己紹介と、面談で聞きたいことを添える。短すぎる依頼は返信率が下がる
④採用担当経由のカジュアル面談
ベンチャー企業は、採用ページや求人媒体から「カジュアル面談」を申し込める会社があります。選考前の相互理解の場として、採用担当や現場社員と話せます。
- 使える場面:採用に力を入れているベンチャー・スタートアップ
- 使いにくい場面:採用枠が少ない会社、応募時期を限定している会社
- 選考に直接関係しない設計でも、企業側に印象は残る。身だしなみと言葉遣いは選考と同程度に揃える
カジュアル面談で何を聞くかはカジュアル面談で何を聞くか、新卒がベンチャーを見極める質問でも整理しています。
⑤インターンシップ・座談会で接点を作る
長期インターンや1日インターン、採用イベントの座談会で知り合った社員に、改めて個別のOB・OG訪問を依頼する方法です。インターンの中で面談時間を設けている会社もあります。
- 使える場面:インターン・座談会に参加した会社
- 使いにくい場面:インターンを実施していない会社
- インターンのあと、採用担当にメールでお礼を送るタイミングで、「もう少し詳しく話を聞きたい」と添える
長期インターンの位置づけはベンチャーの長期インターンは意味ないか、就活につながる人の4つの違いにまとめています。
⑥説明会・就活イベントの個別ブース
ベンチャー向けの合同説明会や、業界別の就活イベントで、志望企業のブースに立ち寄って個別で名刺や連絡先を交換するルートです。
- 使える場面:合同説明会・大学内の就活イベント
- 使いにくい場面:事前予約制のイベント、個別の時間が取りにくい大規模会場
- その場で質問するだけでなく、「後日、改めてお話を伺えますか」と頼むと、OB訪問に発展しやすい
⑦知人・ゼミ・サークルのツテ
身近な知人・先輩・ゼミ・サークルのOB・OGから紹介をもらうルートです。紹介者がいる分、面談のハードルが下がり、相手も率直に話しやすい傾向があります。
- 使える場面:すでに繋がりのある人から話を聞ける場合
- 使いにくい場面:全く縁のない業界・会社
- 紹介してくれた知人を介した連絡なので、お礼とフィードバックの共有を忘れない
7つのルートの使い分け
| ルート | 向き | 不向き |
|---|---|---|
| 大学OB・OG名簿 | 有名ベンチャー・メガベンチャー | 創業数年のスタートアップ |
| マッチングサービス | 他大学の社員・幅広い業界 | 未上場・小規模会社 |
| SNSの公開プロフィール | 採用に力を入れている会社 | 社外発信が少ない会社 |
| 採用担当経由のカジュアル面談 | 採用枠に余裕がある会社 | 選考前の時期以外 |
| インターン・座談会 | 既に接点のある会社 | 接点のない会社 |
| 説明会・イベント | 対面で複数社比較する時期 | 個別の時間が取れない場 |
| 知人・ゼミ・サークルのツテ | 身近に先輩がいる業界 | 縁のない業界 |

就活生
Matcherで何人かベンチャー社員と話したけど、人によって言うことが違う。採用に積極的な人の話に偏っている気もするし、どのルートの話をどこまで信じていいか分からない

ベンチャールーキーズ編集部
話す人によって情報が違うのは、ベンチャーOB訪問では自然な前提として扱うのが安全です。会社の規模が小さく、所属部署や入社時期で見え方が大きく変わるためです。1人の話を結論の根拠にせず、同じ会社で2~3人に会う・採用担当と現場社員を分けて聞くといった複線化がおすすめです。さらに本記事で挙げた職場情報の提供制度(若者雇用促進法)で聞ける数字と、会社の決算・プレスリリース・資金調達情報など公開データを合わせると、OB訪問で聞いた印象を事実と突き合わせて整理できます。マッチングサービスだけに頼らず、採用担当経由のカジュアル面談や、職場情報の提供制度を使った数字での確認を並行させるのが、ベンチャー就活では現実的な進め方です。
OB訪問で得た情報を志望理由・自己PRにどう反映するか、面接でどう語るかまでを一緒に設計する相談です。企業研究で止めず、選考準備に接続させるところまで対話で詰められます
ベンチャーOB訪問で聞くべき、4つの軸
結論から言うと、ベンチャー社員へのOB・OG訪問では、①事業の持続性 ②配属と、入社1・2年のあいだに広がる業務 ③教育体制と裁量の渡し方 ④組織・経営の意思決定の見え方の4つの軸に絞って質問します。一般的な「社風」「やりがい」の質問だけでは、ベンチャーで入社前後に起きるギャップを埋められません。
自分がこの4軸を自信を持って答えられる状態になっているかは、面接の準備度チェック(12問)で、OB訪問の情報を志望理由と自己PRに落とし込めているかの観点から確かめられます。
軸1:事業の持続性と資金調達の見通し
- 直近3期の売上と、どの事業が伸びているか
- 資金調達のステージと、次のラウンドの時期の目安
- 事業領域の需要見通しと、競合会社の数
- 単一事業に依存しているか、複数の収益源があるか
非上場企業は決算情報が公開されていないケースが多く、質問の中で把握できる範囲を補います。業績の調べ方は非上場ベンチャーの業績や将来性を就活生が調べる方法で整理しています。アーリー期スタートアップのリスクはスタートアップ新卒のリスク5つ、アーリー期ならではの注意点と準備にまとめています。
軸2:配属と、入社1・2年のあいだに広がる業務
- 新卒の配属はどう決まるか(本人の希望・事業部ごと・入社後に決定)
- 入社数ヶ月で業務の範囲はどう広がるか
- 入社直後にどんな仕事を任されたか(話者の個別経験)
- 他部署への異動のしやすさ
配属は入社後の経験の中身を決める要素なので、「分かる範囲で」具体例を聞きます。配属の決まり方はベンチャーの職種一覧、新卒で就ける7つの仕事と配属が決まる仕組みにまとめています。
軸3:教育体制と裁量の渡し方
- 新卒向けの研修制度(期間・内容・外部研修の有無)
- OJTの進め方と、メンター制度の有無
- どの段階で、どのくらいの裁量が渡されるか
- 失敗したときのフォローの仕方
ベンチャーは研修が整っている会社と、OJT中心で早期に業務に入る会社の両方があります。「研修が少ない=教育体制がない」ではなく、どう業務の中で学ぶかを聞き取ります。教育体制の見方はベンチャーの教育体制はどうなっているか、研修がない会社と育つ会社の違いで整理しています。
軸4:組織・経営の意思決定の見え方
- 経営陣との距離感と、全社会議などの頻度
- 事業の方向転換(ピボット)が過去にあったか、その経緯
- 入社してから、組織構造や事業領域はどう変わってきたか
- 離職率や、辞めた人の進路の傾向
ベンチャーは組織が成長の途中で変わりやすく、入社時点の体制が1~2年後も続くとは限りません。「入社後に変わる可能性」を前提に、過去の変化の仕方を聞きます。離職率の読み方と面接での質問の仕方はベンチャーの離職率はどう見るか、公的データの読み方と面接での質問にまとめています。
具体的な質問例(4軸ごと)
| 軸 | 質問例 |
|---|---|
| 事業の持続性 | 直近1年で、売上を伸ばしているのはどの事業ですか/次のラウンドの資金調達は、どの時期を想定していますか |
| 配属と業務 | ご自身が入社してすぐに任された仕事は何でしたか/配属は本人の希望はどのくらい通りますか |
| 教育と裁量 | 新卒研修はどのくらいの期間ですか/最初に失敗した経験と、そのときのフォローはどうでしたか |
| 組織・経営 | 入社されてから、組織はどう変わってきましたか/辞めた同期の人は、どんな理由で辞めたか教えてもらえますか |
話者が答えにくい質問(経営機密・業績の内部数値)には配慮します。「分かる範囲で結構です」「無理に答えなくて大丈夫です」と前置きすると、相手も答えやすくなります。
聞かないほうがよいこと3つ
一方で、OB・OG訪問では次の3つは踏み込まないほうが安全です。選考への印象や相手との関係に影響します。
- 本人の個別の年収・給与の具体額:全社の初任給・給与テーブルの範囲(公開情報)であれば聞けますが、本人の個別年収や賞与の具体額は、相手が答えづらく関係も損ねます。「新卒入社時の初任給の目安」「評価と給与の連動の仕組み」までが聞ける範囲です
- 他社の選考状況や、比較を強いる質問:「他社と比べてどう違いますか」「御社とA社はどちらが優れていますか」など、他社を比較に出す質問は、相手が公的に答えづらい場面です。自分の中で比較軸は持っていても、相手には「御社の〇〇について教えてください」と単独で聞きます
- 回答できない個人情報・経営機密:人事評価の仕組みや昇進基準は聞いていい範囲ですが、具体的な人事の判断や、未公開の経営情報は答えてもらえません。「〇〇の役員は、なぜ退任されたのですか」のような、公開情報の範囲を越える質問はしない前提にします
カジュアル面談・インターンとの違いと、使い分け
結論から言うと、OB・OG訪問・カジュアル面談・インターンシップは、使う目的・場の性質が異なります。使い分けないと、聞きたいことが重複して時間を無駄にします。
カジュアル面談は、選考前の相互理解の場
カジュアル面談は、企業側が選考前の学生との相互理解を目的に設定する場です。採用担当や現場社員が話し手になり、企業側は自社の魅力を伝え、学生側は興味関心と志望の方向性を伝えます。
- 進行の主導権は企業側にあり、情報は企業に有利な方向にまとまりやすい
- 選考に直接関係はしない設計だが、企業側に印象は残る
- 入り口が広く、志望度が固まっていない段階でも使える
インターンシップはタイプ別に情報が変わる
インターンシップは、三省合意で定められた4類型があります(出典:文部科学省 インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取組の推進に当たっての基本的考え方(三省合意)(新しいタブで開きます))。
- タイプ1(オープン・カンパニー):企業・業界の説明会・イベント。就業体験はなし
- タイプ2(キャリア教育):大学の授業・企業の教育プログラム
- タイプ3(汎用的能力活用型は5日間以上、専門活用型は2週間以上):実施日数の半分超が就業体験。社員の指導とフィードバックがある
- タイプ4(高度専門型):ジョブ型研究インターンシップ等
タイプ1・2で企業が得た学生情報は、制度上、広報・採用選考に使えません。タイプ3・4で得た情報は、要件を満たせば採用選考に使える仕組みです。この違いが分からないと、「インターンに参加すれば早期選考に呼ばれる」と誤解しがちです。秋冬インターンの選び方は28卒の秋冬インターンはどう選ぶか、早期選考につながる探し方と応募数にまとめています。
OB・OG訪問は、企業の公式な採用広報・選考とは別に行われることが多い
OB・OG訪問は、企業の公式な採用広報・選考とは別に行われることが多い一方で、運用は企業ごとに異なります。個人として社員と話す場で、本音の情報を得やすい一方、情報の偏り(話者個人の経験に依存)があります。選考との関係は会社ごとに違う点は、次章で改めて整理します。
| 場 | 性質 | 得られる情報の中身 |
|---|---|---|
| OB・OG訪問 | 個人として話す場 | 話者の個別経験・率直な感想 |
| カジュアル面談 | 企業側の相互理解の場 | 会社としての公式見解・採用ポリシー |
| インターン(タイプ3・4) | 就業体験の場 | 業務の実際・社員の働き方 |
| インターン(タイプ1・2) | 説明・教育の場 | 業界・企業の概要 |
使い分けのポイントは、「個人の経験を聞く」ならOB訪問、「会社の方針を聞く」ならカジュアル面談、「業務を体験する」ならタイプ3・4のインターン、と目的で選ぶことです。
選考との関係と、ハラスメントへの備え
結論から言うと、OB・OG訪問は選考に直接影響しない設計が原則ですが、企業ごとに実態は違います。ハラスメントに対しては、2026年10月1日施行の法改正で防止義務が強化されています。
ハラスメント防止義務化(2026年10月1日施行)
厚生労働省の案内によると、2026年10月1日以降、事業主には求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置が義務になりました(根拠法は令和7年法律第63号による改正)。義務の対象には、面接、説明会、OB・OG訪問、インターンシップ、SNSなどオンラインでのやり取りが含まれます(出典:厚生労働省 職場におけるハラスメントの防止(求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止)制度ページ(新しいタブで開きます))。
- 相談先:厚生労働省の案内に基づき、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)で匿名の相談ができる
- 事業主に求められるのは、方針の明確化、相談体制の整備、再発防止策の実施など
- 対象には、企業側の社員から求職者(=就活生)への行為も含まれる
OB・OG訪問の場で、断りづらい誘いや、個人情報・連絡先の執拗な要求があった場合は、その場で丁寧に断り、終わってから都道府県労働局に相談する流れが使えます。
オワハラ・内定辞退の相談先
内定辞退を妨げる「オワハラ」については、厚生労働省のリーフレットで防止が求められています(出典:厚生労働省「学生の職業選択の自由を侵害する『オワハラ』は行わないでください!!」リーフレットPDF(2026年1月付)(新しいタブで開きます))。該当し得る例の1つに「内定辞退の防止を目的として、内定を承諾することについて、保護者の同意を強要すること」が挙げられています。
- 相談先:厚生労働省の案内により、都道府県労働局・新卒応援ハローワーク(公的な就活相談先)
- 大学のキャリアセンターでも、相談体制がある学校が多い
- 内定承諾書を提出していても、学生側からの内定辞退は、民法627条1項(期間の定めのない雇用契約における2週間前の申し入れによる解約)が適用されると判例・解説では解されています(根拠条文はe-Gov法令検索 民法第627条(新しいタブで開きます))
OB・OG訪問の相手が「内定を出すから、他社の選考を辞退してほしい」と話してきた場合は、その場での返事を避け、大学のキャリアセンター・新卒応援ハローワーク・都道府県労働局に相談するのが安全です。
選考との関係は会社ごとに異なる
OB・OG訪問の扱いは企業ごとに異なり、選考と切り離している場合もあれば、参考情報として扱う場合もあります。実運用の目安は次のとおりです。
- 選考と切り離している会社:OB訪問の内容は選考に反映しない
- 社員からのフィードバックがある会社:OB訪問者の印象を参考にするが、選考の決定要因にはしない
- 選考プロセスの一部に組み込んでいる会社:事前にリクルーター面談として位置づけている
事前に「選考に関係しますか」と確認してから訪問するのが丁寧です。選考に関係すると分かった場合でも、過度に身構える必要はなく、面接と同程度の準備で臨むのが基本です。
ケース別の進め方
OB・OG訪問の進め方は、学生の立ち位置によって調整が必要です。ここでは3つのケースを扱います。
大手も併願している場合
大手とベンチャーの両方を志望している場合、大手向けOB訪問とベンチャー向けOB訪問を目的別に分けると情報が整理しやすくなります。
- 大手OB訪問:事業領域・部署の選び方・ジョブローテーションの仕組みを中心に
- ベンチャーOB訪問:事業の持続性・配属・業務の広がり方を中心に
- 両方のOB訪問で、「新卒1年目に任される仕事」の違いを聞くと、1社目の選び方の判断材料になる
大手とベンチャーの判断軸はベンチャーと大手はどっちがいいか、新卒の1社目を決める判断の順番にまとめています。
1社目で迷っている場合
志望業界が固まっていない段階では、OB・OG訪問の相手を「業界で絞る」のではなく、「キャリアの方向性で絞る」と効率が上がります。
- 事業領域が異なる複数のベンチャーで、キャリアパスを聞き比べる
- 大手入社後にベンチャーへ転職した人、逆のケース、両方に話を聞く
- 「あなたなら今、どんな1社目を選びますか」という問いを添える
OB訪問で聞いた話を、自分の価値観と突き合わせる作業は、自己分析の深掘りと並行して進めます。自己分析の進め方は自己分析のやり方、28卒ベンチャー志望が最初にやる5つの手順と使い分けにまとめています。
地方の学生で、現地訪問が難しい場合
- オンライン対応のOB訪問が増えており、Zoom・Google Meetで実施される
- マッチングサービスの多くは、オンライン面談の希望を事前に設定できる
- 大学のキャリアセンターが、オンラインOB訪問を仲介している場合もある
- 対面にこだわる場合は、就活イベント・企業説明会に合わせて都市部での訪問を集約する
地方学生のベンチャー就活全体の進め方は地方学生のベンチャー就活、オンライン選考と上京のタイミングで差がつく進め方にまとめています。
よくある失敗3つと、避けるためのチェック
失敗1:マナーだけ気にして、聞く内容が薄くなる
OB訪問の記事は、服装・言葉遣い・メールの書き方の解説が中心のものが多く、肝心の「何を聞くか」が薄くなりがちです。マナーは守る前提で、質問リストの中身に時間を使います。
失敗2:1人の話で結論を出す
ベンチャーは所属部署と入社時期によって、同じ会社の中でも見え方が大きく変わります。1人の話を会社の全体像として扱わず、できれば2~3人、または採用担当と現場社員を分けて聞きます。
失敗3:お礼メール止まりで、情報を使い切らない
OB訪問の情報は、エントリーシート・志望動機・面接の逆質問に反映して初めて使い切れます。訪問後にメモを整理し、志望度・質問の答え・次に聞きたいことを書き留めておきます。
入社前のチェックリスト
- OB・OG訪問の目的(企業研究・選考準備・自己理解)を自分で決めている
- 聞きたい論点を4軸(事業・配属・業務・組織)で整理している
- 本人の個別年収・他社比較・経営機密は聞かない前提で質問を作っている
- 選考との関係を事前に確認している
- 訪問後にメモを整理し、志望理由・自己PRに反映している
- ハラスメントがあった場合の相談先(都道府県労働局・大学キャリアセンター)を把握している
よくある質問
ベンチャー社員のOB・OG訪問は、何人くらいに会えばよいですか
志望企業ごとに2~3人、志望業界全体では5~10人が目安です。1人の話に偏らない複数ソースを確保しつつ、1人あたりの話を深く聞くほうが情報の質は上がります。マッチングサービスで数だけ重ねても、聞きたいことが決まっていないと情報が整理されないので、人数より質問の設計を優先します。
OB・OG訪問の服装は、スーツと私服のどちらがよいですか
事前に相手に確認するのが安全です。カフェなど社外で会う場合は、オフィスカジュアル(ジャケット+チノパンなど)が無難です。ベンチャーでも、採用担当と話す場や会社オフィスでの面談は、スーツで臨むのが丁寧な印象になります。相手から「私服で大丈夫です」と言われていても、ジーンズやサンダルは避けます。
依頼メールで、どのくらいの情報を書けばよいですか
自己紹介(氏名・大学・学年・学部)、志望業界・志望企業への関心、聞きたいことの要点、希望の日程(複数候補)を書きます。長文は避け、300~500字程度が目安です。相手は多忙な社会人なので、簡潔に・丁寧に伝えます。マッチングサービス経由の場合は、サービスの指定フォーマットに合わせます。
OB・OG訪問で聞いた内容は、エントリーシートや面接で使ってよいですか
使ってよいですが、相手の名前や個別の発言をそのまま出すのは避けます。「OB訪問で伺った話を踏まえて、御社の〇〇に魅力を感じました」と、情報源を一般化して伝えるのが安全です。本人が公開を認めている話や、採用資料に書かれている内容は、そのまま引用できます。
選考中にOB訪問をしてもよいですか
選考中でも訪問は可能で、志望度の高さを伝えられるメリットもあります。ただし、面接直前の時期は相手も自分も忙しくなるため、選考の初期~中盤までに済ませておくのが現実的です。選考プロセスに影響するかは会社ごとに違うので、事前に採用担当か人事に確認します。
OB・OG訪問のお礼は、メールと手紙のどちらがよいですか
メールが基本で、当日中に送るのが目安です。手紙は必須ではなく、特に印象を残したい場合に補助として使う程度で十分です。お礼メールには、面談で特に印象に残った話を1~2点添えると、形式的な文面にならず、相手も読み返しやすくなります。
マッチングサービスだけで探してもよいですか
複数ルートの併用がおすすめです。マッチングサービスは、採用に積極的な社員が多く、話が「自社の魅力」に寄りやすい傾向があります。採用担当経由のカジュアル面談、SNSの公開プロフィール、大学のキャリアセンターなど、別のルートの情報と突き合わせると、偏りが減ります。
OB・OG訪問をしていないと、選考で不利になりますか
OB訪問の有無が合否を直接左右する会社は少数です。ただし、ベンチャーの面接では「御社をどう調べたか」が聞かれやすく、企業研究の深さが志望度の指標として評価されます。OB訪問が難しい場合は、公開情報での企業研究(決算・プレスリリース・採用ページ・社員のSNS)で深さを担保します。
ハラスメントのような不快な扱いを受けたら、どうすればよいですか
その場では無理に対応せず、丁寧に断って早めに退出します。その後、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に匿名で相談できます。大学のキャリアセンターや、新卒応援ハローワークにも相談窓口があります。「断りづらかった」「おかしいと感じた」段階で、一人で抱え込まず、公的な相談先に話すのが安全です。
新卒応援ハローワークはOB訪問の相談もできますか
就活全般の相談先として、OB訪問の進め方や企業研究の進め方も相談できます。新卒応援ハローワークは全国に設けられ、担当者制の個別支援、ES・履歴書の添削、面接対策、求人の紹介を行っています(出典:厚生労働省 新卒応援ハローワーク(新しいタブで開きます))。
まとめ
- ベンチャー社員へのOB・OG訪問は、大学OB名簿では見つかりにくいため、マッチングサービス・採用担当経由のカジュアル面談・SNSなど7つのルートを組み合わせて探します
- 聞くべきことは、一般的な「仕事内容」「社風」ではなく、①事業の持続性 ②配属と、入社1・2年のあいだに広がる業務 ③教育体制と裁量の渡し方 ④組織・経営の意思決定の見え方の4つの軸に絞ります
- 1人の話を会社の全体像として扱わず、同じ会社で2~3人、または採用担当と現場社員を分けて聞くと、情報の偏りを減らせます
- 2026年10月1日施行の法改正で、OB・OG訪問を含む就活中のハラスメント防止が事業主の義務になりました。相談先は都道府県労働局・新卒応援ハローワーク・大学キャリアセンターです
- OB・OG訪問・カジュアル面談・インターンシップは、目的と場の性質で使い分けます。個人の経験はOB訪問、会社の方針はカジュアル面談、業務の体験はタイプ3・4のインターンです
- OB訪問で得た情報は、エントリーシート・志望動機・面接の逆質問に反映して初めて使い切れます。訪問後のメモ整理と、志望理由への落とし込みまでをセットにします
- 次のアクション:志望度の高い3社を決め、1社目のOB訪問相手を1人選び、4軸の質問リストを書き出して依頼メールを送るところから始めます
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ベンチャールーキーズ編集部
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